ADV ゲーム

steamで無料配信されている名作「ナルキッソス1&2」をネタバレしながらレビュー。




おしりです。

今回は全世界で100万以上のダウンロードを記録した名作ノベルゲーム「ナルキッソス」をクリアしたのでその感想、解説を書いていきます。

ナルキッソス ~もしも明日があるなら~ PortaBle (通常版) 【PSP】【中古の価格 1,000円】 | ゲーム博物館

100万を越えるダウンロードとはいえコンシューマー機ではPSPでしか発売されていないので何も知らない人のために少し解説を。

ナルキッソスシリーズとはで突如不治の病を患った若者を中心に描かれる死生観、死に様、人生を描いたノベルゲームです。

全編通しての特徴は音楽、BGMとテキストがほとんどでCVも発表当初は無し、今現在も主人公CVは無しです。

(今配信されている作品ではボイス有と無しを選べます。)

タイトルの「ナルキッソス」とは水仙の花のことで花言葉は自己愛、自惚れ。

病によって自分の寿命がのこりわずかになった人物が主人公で”自分だけが病気で死ななければならない”ことへの絶望感、後悔、恐怖の心情描写が非常に多いです。

作中では小さな画像とテキストだけが表示されて余命わずかな人物の思いとは裏腹に淡々と話が進んでいきます。

そのせいでごくまれに出てくる登場人物の絵にはレア感を感じます。

この辺りは他のADVゲームとは大きく違い好みが分かれる部分でしょう。

本作の主な舞台はとある病院の7階でこの7階は終末期の患者の治療ではなく心身のケアを主とした”ホスピス”です。

ホスピスとは終末期患者の痛みや症状の緩和を目的とした医療で”患者を治す”ことではなく”患者に苦痛を与えないように最期を迎えてもらう”ことが目的。

1作目の公開から16年が経過した2021年ではsteamにて多くのナルキッソスシリーズが販売中、今回ぼくがクリアしたナルキッソスシリーズは1.2.姫子エピローグ、ゼロの4作品です。

さすがにこの4作品を一気に紹介すると長くなるので今回は1と2の内容だけ紹介します。

 

1&2は無料でプレイできます!これだけでも覚えておいてください!

それでは少しのネタバレを含んだ本題へ。

ナルキッソス1

記念すべき第1作、主要人物は運転免許を取ったばかりの21歳大学生「阿東優」と病院の7階で出会う女性の「セツミ」の二人です。

作中ではほとんど一緒に行動することになりますが心情描写や視点は優で話が進むので今作の主人公は優です。

(基本的に名前が出てこないので以下主人公)

プロローグでは主人公が夏から半年をかけて病気による入退院を繰り返し本作の舞台である7階、ホスピス入りが決まるところまでが描かれるんですが普通の大学生なので自分が病気になるとは想像もしてこなかったわけです。

そんな人がいきなり入院を告げられ最終的には死の宣告をされるまでの感情がうまく描かれていてゲーム開始3分ほどでぼくは本作の重さを察しました。

本編開始から”7階の住人”となった主人公はセツミという少女と出会い7階のルールを聞かされます。

そのルールとは

① 3回目の仮退院が最後。


② 逃げたい時はA駅ではなくB駅にに向かえ。

③何も食べるな。それが最も近道・・・

家族にとっても一番負担が少なくて済む

これらは病院の医師からではなく7階の住人である終末期患者の間でだけ語り継がれたルールです。

①~③まで死を連想させる嫌なルールですね。

この時主人公は1回目の入院でセツミは2回目の入院、セツミは次が三回目の仮退院になるので残された時間は少ないです。

前半はセツミとの会話がメインで二人にとってそう遠くない”死ぬ日”は7階か家かどちらが良いかを聞かれます。

 

まだ考えていないと答える主人公、家と7階どちらも嫌というセツミ、こんな暗い会話ある!?

ちなみに病院の窓は15㎝しか開かないので飛び降り自殺はできません。

自殺はできないから何も食べないことが近道、家族にとっても負担が少ない、ルール③は自殺はできないという意味も含んでいるみたいですね。

そんなある日見舞いに来た主人公の父親が車の鍵を主人公の手の届く位置へ置いて席を離れます。

行く宛てもなかった主人公ですがセツミの「死ぬときは家も7階も嫌」という言葉を思い出してその鍵を持ってセツミと一緒に車で病院を出ます。

これにて前半部分(といっても最初の2章)は終了でここから後半部分の逃避行編へ入ります。

 

 

逃避行編

お父さんの銀のクーペで病院を飛び出した主人公とセツミですが行く当てもなければ所持金も数千円なので一寸先は闇な旅が始まります。

病院を飛び出してからは最終的に960kmの旅になるんですが主人公とセツミの2人は病人、薬が尽きることは命が尽きることと同じで車のガソリン代、食事代も考えると当然所持金はすぐに底をつきてしまします。

そこで主人公がとった行動は盗みです。

コインランドリーでは衣服を、パチンコ屋ではお金を、薬局では薬を盗むことになるんですが衰弱している主人公は衰弱して体力が落ちているので何度も捕まりそうになります。

 

そういった盗みのシーンはゲームといえど見ているだけで嫌な汗をかきました。

それと主人公が犯罪に手を染めることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが”どうせ死ぬなら”自分も同じことをやっていたかもしれないと思いました。

この時にはもし自分が主人公と同じ立場になったら同じ行動をとってしまうだろうと考えさせられるくらいには感情移入していました。

確かに余命数日あるかないかの女の子と逃避行をして目的ができたときに後悔しない選択肢、つまり病院へ戻るか逃避行を続けるかの2択を選ぶのならば強盗してでも逃避行を選びますよね。

やってることは犯罪ですが主人公が不憫すぎて主人公に肩入れしたくなります。

こんな感じにヒヤリとさせられる出来事の連続ですが車内で会話をしていくうちにセツミとは徐々に打ち解けていき最後は海にたどり着きます。

この冬の海でセツミがずっと昔からやりたかったことを最後に成し遂げてこのナルキッソス1は幕を閉じます。

最後の海での二人のやり取りはSEとBGMも相まって「ああ、、セツミ死ぬんだな」という雰囲気が出まくっててただただ悲しいです。

わかってはいましたが最後の最後まで奇跡なんて起きるわけもなく「ものすごくリアルな現実味を帯びた不治の病の男女の物語」でした。

冒頭でも書いた通り主人公が免許を取った夏から冬のセツミとの別れまで淡々とテキストが進んでいくんですが無駄な描写が少なくテンポがいいです。

 

シリーズ全体に言えることですが丁度良いボリューム(クリアまで1~2時間程度)、BGM、SE、死生観、日常をテーマとしたシナリオが特徴的です。

ですがそれ故に好みはわかれるでしょう。

他に類をみない内容で作中の雰囲気(主に効果音やSE)に魅力を感じどんどん引き込まれていきました。

終末期患者の男女二人が逃避行をするという展開には男として少しばかりロマンを感じましたし何の準備もせずに何の目的もなく始めた旅がどのような終わりを迎えるかは最後に死を迎えること以外想像できませんでした。

大げさかもしれないんですけど自分が今健康で何でもできるうちにやりたいことはやっておこうという気持ちにもなりました。

たぶんこの気持ちは1週間もすれば消えてしまうんですけどね

 

ぼくの感想を言わせてもらうとこんな感じです。

ナルキッソス2

ナルキッソス2はナルキッソス1の7年前の物語で主人公は1で優と行動を共にしたセツミと2で初登場となる姫子の二人です。

1ではあまり感情を表に出さなかったセツミの過去編でありセツミと深く関わった姫子という女性とのひと夏の出来事が2の内容です。

主要人物はセツミと姫子の二人ですがセツミは1で登場しているせいかプロローグの段階から姫子パートが多めです。

姫子は状態の悪いオープンカー「ユーノス」を購入して毎週修理するほどの車好きであること、親友の優花とのやりとり、大学に通いながら7階ホスピスのヘルパーを行う妹の千尋のことなど、姫子とその回りの人間関係がプロローグでは描かれます。

そんな楽しい日常ですが姫子は病気で入院してしまいそのまま体調は悪くなる一方、最初はお見舞いに来てくれる人もいましたが次第に優花以外は誰もお見舞いには来てくれなくなり最終的に姫子は7階の住人になります。

この「平和な日常が崩れて7階の住人になってしまうまでの流れ」は1でも見ましたが2では登場人物とそこに至るまでの描写が多いせいで1と比べても悲しすぎました。

 

本編では15歳のセツミと7階の住人となった姫子が出会い姫子の「死ぬまでにやってみたい10のこと」を一緒にやっていくという内容です。

1では詳しく描かれなかったセツミの行動や思考を補完するシーンが多くまだ7階の住人ではなく入退院を繰り返している状態なので1の頃より元気だったセツミをみることできます。

時系列的には1の7年前の話ですがナンバリング通り1→2の順番でプレイする方が楽しめます。

 

1で重要な役割を担っていた水仙、ナルキッソスは2でも登場します。

1で水仙を見たセツミが何を思っていたのか徐々に明らかになるところなんかはシリーズの繋がりを感じますね。

 

姫子は明るい性格で7階の住人となってからも好き勝手に行動しますが時折見せる「死に怯える姿」には何とも言えない気持ちになります。

 

数年前まで姫子はカトリック信者で神に祈ったりお祈りをしてきた人間です。

しかしそんな神に仕える身である姫子がなにも悪いことをしていないのに不運にも終末期患者になってしまうところがこの世の理不尽さというものを表しているように思えめっちゃ可哀想に思えました。

 

2では患者となった姫子、セツミの周りの人間関係の変化も多く描かれます。

姫子の場合妹の千尋は”姉妹”としてではなく”患者とヘルパー”として接するようになり優花には衰弱していく自分の姿を見られたくないことから自分から見舞いに来るのをやめるように伝えます。

 

セツミの場合は多額の入院費を払うために家族は家賃の安いアパート引っ越し母はパートへ出かけるようになります。

だけど一向に身体は良くならずにセツミや姫子は家族に申し訳ない気持ちを抱き、逆に家族は病人の負担にならないように無理して明るく振る舞うところが「リアルな闘病生活」にみえて陰鬱とした雰囲気です。

最後は1のラストのように姫子がやりたかったことにセツミが付き添い幕を閉じます。

残念ながら奇跡も魔法もない無い普通の世界なので病気は治りません。

その後の姫子のお話は後日談である「姫子エピローグ」で明かされます。

総評

2作とも2時間かからずにクリアできる内容で無駄なシーンが無くテンポよく話が進んでいきます。

作中では常に病死を連想させる会話が繰り広げられるので少し鬱になりながらも没頭して読み進めました。

死生観や生き様、死に様がテーマで病人とその親族のリアルな心情描写にはゲーム開始数分で感情移入してしまいます。

 

ホスピスという施設はぼくが住んでいる県だけでも4~5か所ありますし少子高齢化が進んでいく事を考えると今後もっと増える可能性が高いです。

健康であればホスピスのことなど知らないままでいたでしょうが本作を通して終末期患者だとかホスピスという施設がどういうものなのかを考える良い機会ができました。

スッキリする展開や登場人物が希望をもって前に進むことが無い分かなり人を選ぶ作品だとは思いますがぼくは好きな内容でした。

 

特に1でセツミがとった行動や発言には姫子との出会いが大きく関係していることが2で判明します。

1だけでは少し消化不良な部分があったために1と2をセットで配信してくれた関係者には感謝です。

ラストは2作ともすごく切ない終わり方をします。

後半の2作品についてはこちらから。

 

重要なことなので再度報告しますが1&2はsteamにて無料でダウンロードできるので気になる方はタダなので見るだけでも見ていってください!

一応貼っときますねsteamのナルキッソスのページ

-ADV, ゲーム