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電波?考察?鬱ゲー?さよならを教えてを解説レビューします。




おしりです。

今回はタイトル通りあの伝説の鬱ゲー

さよならを教えて

の解説レビューをしていきます。

このゲームは未プレイ初見プレイの方では内容を理解するのが非常に難しい電波な内容なのでネタバレしまくりの内容となります。

それでいてプレイヤーによって解釈や考察、感じ方が全く異なってくる作品なのであくまで私個人の一意見として拝見していただければと思います。

あらかじめご了承ください。

パッケージの段階で伝説

ではゲーム本編の話を始める前に2001年に発売されてから21年の間に起きた動きを解説していきましょう。

 

本作「さよならを教えて」は2001年にCRAFTWORK(クラフトワーク)より発売されたR18ゲームでジャンルはファナティックアドベンチャーノベルです。

ファナティックとは”狂信”という意味でその辺りは実際にやってみれば納得です。

キャッチコピーは、「言葉、男、狂気、少女、さよなら」

でもってパッケージに

こういうガチめな注意事項が書かれているのも有名な話。

パッケージを開けるとディスクには文字がびっしり刻まれていて狂気を感じます。

私はDL siteにてダウンロード版を購入したから実物を拝めなくて残念だと思っています。

 

内容は後述しますがこういう尖ったパッケージにゲーム内容に加えCRAFTWORKさんの経営状況とか色々あって再販が難しい状況になってしまい内容だけで無くプレミアゲームとしても名を轟かせました。(6万を越えたそうな)

 

ですが2011年にビジュアルノーツという会社の協力もありあそBDにて再販、さらにその5年後にDL siteにてDL版の配信が開始され今ではWindows10やAndroidといった令和を生きる私たちにとって馴染み深いOSにてお手軽にプレイできるようになりました。

 

その際に狂気のディスク文字は無くなりイベントCGは1枚削除

どこでもセーブができるようになったりフォントの変更が可能になり遊びやすくなっているみたいです。

今では「終の空」「ジサツのための101の方法」と並んで三大電波ゲームとしてもよく話題にあがります。

余談ですがCRAFTWORKは2022年からTwitterを始めていて新作Geminism-げみにずむ-(仮題)を製作中とのことです。

しかも製作陣が本作と大体同じっぽいのでどんな作品になるか楽しみです。

なお、感染症の影響で進行状況はよろしくない模様。

 

ゲーム外の情報はこんなところですね。

まだゲーム本編の話じゃないのにもう伝説です。

人間の狂気を描いた鬱ゲー

ではあまりにもやべえ内容で20年以上語り継がれるその本編について触れていきましょうか。

 

本作の主人公は女子校に通う教育実習生で人間関係に悩みを抱えています。

そんな主人公はある日自分が怪物となり天使を犯すという奇妙な夢を見ます。

この絵の迫力が凄まじく良くも悪くも圧倒されます。

そんな奇妙な夢を保健室の先生であるとなえに相談していた時に夢でみた天使にそっくりな女の子

巣鴨 睦月(すがも むつき)と偶然出会います。

夢の中の天使と似ている睦月が気になる主人公ですがその場を後にしてその日も教育実習生として学校内を歩き回ります。

アダルトゲームとしては天使の夢以外はそこまで尖った設定には思えませんが見ての通りゲーム画面は赤黒く独特の雰囲気を漂わせています。

物語は主人公の一人称視点で進みゲーム内の背景や心情描写は主人公が見ているものがほとんどです。

そんな主人公視点で教育実習生として女の子と毎日を過ごすことが主な内容です。前半はね。

学校内で出会う女性は全員で7人

睦月、となえ以外には

主人公の教育実習を担当する瀬美奈

中庭にいる田町まひる

屋上で出会う高田  望美(のぞみ)

図書室の目黒 御幸(みゆき)

弓道場にいる上野こより

 

と交流を深めていくことになります。

 

この女の子たちは特定の場所でしか出会うことができずなぜか他の生徒も見当たらないので基本的に一対一で他愛もない会話をします。

そんな感じで天使の夢とこの赤黒いゲーム画面以外は案外普通(?)の日々を送る主人公ですが

本編が始まり5日目あたりから主人公の狂った描写は多くなります。

 

ターニングポイントとなるのがとなえとの会話。

この日もとなえと会話をする主人公ですが連日夢で見る天使のことを相談している時に偶然睦月が保健室へ入ってきます。

睦月を見た主人公の反応に対してとなえは

「もしかして…アレかい?あのコが…」

という質問をします。

それに対しこのように3つの選択肢が現れます。

主人公が睦月のことを夢の天使と重ねて見ていることを察したとなえに対してそれをごまかそうとしますがここではどれを選んでも・・・

そうです。あのコが僕の畏敬する天使様なのです

はい、それじゃあこのあたりでネタバラシしましょう。

 

実はこの主人公は統合失調症を患っていてそれが原因でこのような返事をしてしまったのです。

 

この記事を作る際に統合失調症についてざっくりと調べたのですがこの病気は大きく分けて陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つの症状に分けられるそうです。

でもって主人公がこれらのどの症状が発症しているかというと

全部です

もう絶望的ですね。

正確にいうと5日目までは全部ではなくこれらの症状の一部が見え隠れする程度なんですがこの日を境に病は進行し始め8日目なんかは地獄です。

作中で見られる主な症状は

妄想、幻覚、思考障害、自閉、記憶力の低下

これらが目立ち行動や感覚に大きく影響してきます。

なので後半部分はこのゲームの狂気的な部分、主人公のネジが外れてしまった行動を存分に味わうこととなります。

もちろん主人公の一人称視点でね。

主人公のおかしな行動としては


ヒロインの虐殺や陵辱


用を足すためにトイレへ向かうが用を足しながらトイレへ向かう


グラウンドで叫びまくる

などなど。

 

特に各ヒロインの陵辱シーンですが

弓道場へ移動して何の躊躇いもなくいきなりこよりの腕を引き抜き矢を射ります。

かと思ったら次の瞬間には自分がこよりに矢を射られたり。

さらにその次の瞬間には何事もなかったかのように他愛もない会話をして弓道場を後にします。

このシーンはもう常軌を逸しています。

 

これ以外にも数えきれないくらいの奇行を繰り返しますがそれを全部紹介するとあと30分くらいかかるのでこの辺にしときましょう。

 

でもって先ほど話した通り主人公の一人称視点で話は続くので心情描写や聞こえる音、見える景色も統合失調症患者のそれになってしまいます。

私が特に不気味に感じたのは

 

チャイムの音が不気味になる

幻覚を見る

相手の声を聞き取れなくなる

挙句の果てには選択肢を無視する

 

といったところです。

こんな感じに狂いきった主人公の視点を存分に味わった後に実は学校は大学病院だったことが判明してとなえと瀬美奈が主人公がこのようなことになってしまった経緯を語り幕を閉じます。

 

本編の内容としては大体こんな感じです。

私はたぶん読むのが早いので5時間半前後でエンディングを迎えました。

とりあえずエンディングを迎えた段階での私の感想は

このゲーム、気持ち悪りぃ……

鬱ゲーと恐れられる所以

では本編の内容をある程度理解していただいたところで本作が20年以上もの間他の追随を許さない電波ゲー鬱ゲーとして恐れられてきた理由を解説していきましょう。

なお、ここから先は冒頭でお話しした通り解釈や感じ方が人によって大きく異なるのでそのつもりで読んでいってください。

 

結論から言ってしまうとこのゲームで人は死にません。

 

先ほどこよりの腕を引き抜いたり矢で串刺しにしたと言いましたがそれらは主人公の妄想の世界での出来事なので人は死んでいないです。

 

というか本作の登場人物は主人公を含めて4人しかいないです。

作中で陵辱してきたヒロインは実は主人公の妄想の産物なんですよね。

 

でもって各ヒロインには妄想の元ネタがあって

睦月は夢で見た通り天使様。

まひるは中庭の猫、こよりはボロボロの人形、望美は屋上のカラス、御幸は図書室の標本です。

この5人の女生徒は睦月以外実在しない人間です。

 

結構な暴力を振るってもすぐ何事もなかったかのように復活したのは物だったからですね。

 

とはいえまひるは猫、望美はカラスといった感じに動物なので終盤こいつら相手に腰を振っていたと考えると気持ち悪すぎてゾッとします。

しかも中途半端に女生徒ではないことを理解しているんですよね。

 

逆に実在するとなえ、瀬美奈、睦月の3人。

この人たちと主人公の関係性を改めると、

 

睦月は大学病院に通う重度の鬱病患者。

となえは大学病院の主人公の担当医で瀬美奈の同級生。

瀬美奈は主人公の姉です。

 

本編は完全に主人公の一人称視点で話が進むのでわかりにくかったのですが客観的に本作の出来事を見ていくと

 

統合失調症を患った主人公を姉である瀬美奈が同級生であるとなえに頼み担当してもらう。

主人公の病気は進行していき、となえは主人公の妄想に話を合わせて会話をする

主人公は天使の夢を見る日々で睦月と出会う

病気は進行し続けエンディングへ

睦月は退院、となえ、主人公、瀬美奈はあいかわらず。

こんな感じです。

まあなんというか、、

何も解決してないんですよね

この終わり方が後味の悪さを印象付けていて鬱エンドたる所以だと思うんですよね。

私的には主人公が統合失調症になった経緯についてとなえと瀬美奈が話すシーンにて
主人公はまじめすぎるがゆえに家族の圧力により狂っていったことや精神的にくるタイプだったことが原因で
病気になったことが判明します。
そのあたりが妙にリアルでゾッとしました。

 

結局主人公の病気は回復せず関わった姉の瀬美奈やとなえもそれを見てやるせない会話を繰り広げるラストにねっとりとした鬱を感じました。

そしてスタッフロール後はとなえに対して先生と言い学校では無く病院であることを理解している主人公
あれ、もしかして良くなる兆候?と思ったんですが

今度は教育実習ではなくとなえの助手という妄想が始まっただけでした。

 

最後の最後で回復の兆候が見られたと思ったのにやっぱりダメだったよ……


エンディングの曲が流れているところに不気味な映像が映されFIN
この主人公には本当に救いがないんです。

 

本作の鬱って他のゲームと比較してあの人が悲惨な最後を迎える、世界を救うルートがない、みたいにわかりやすい鬱展開が無いから言語化が難しいんですよね。

(死んだと思ったらひょっこり復活するし)

まあなんというか”狂人視点の地獄をプレイヤーとして正常なメンタルで体験するゲーム”なので実際にプレイしてみなければ感じられない部分も多いです。

 

しかもタイトルのさよならの通り天使様として扱っていた睦月には絶対にフられますからね。

やっぱり天使なんていなかったね。としか言いようがないです。

こんな感じに唯一無二の鬱ゲーの形をしています。

 

ただ4人のうち全員が不幸になったかというと実はそういうわけでもなく

主人公は統合失調症でありながらも頭がおかしすぎて逆に楽しそうにしている描写もあるしとなえは主人公が好きでやっちゃってます。

それに睦月は主人公をみて「私なんかまだまだ甘えてるだけかも」と思い鬱病から立ち直っています。

睦月は自分より重い症状の人と出会うことが鬱病から立ち直るきっかけとなっていました。

 

最後に瀬美奈。

瀬美奈は、、、不幸だ、、、

結局のところ電波ゲー?

ここまで狂気と鬱がてんこ盛りのやべえゲームであることを説明しましたがやはり20年以上支持を得ているだけあって設定の作り込みや独特の表現は凄まじいです。

電波ゲーと言われていて終始意味不明な文章や展開が続くので初回クリア後は

狂気を魅せるためにシナリオを犠牲にしてる

と感じましたが、クリア後に色々考えたり考察、解説動画を見て頭の中で色んな情報を整理するとかなり多くの設定や抽象的な表現が含まれていることに気付かされました。

有名な設定だと各ヒロインの名前、これは山手線から名付けていて永遠にループすることから統合失調症は終わらないことを意味しているという説が有力です。

 

他にも主人公が妄想の産物として生み出したヒロインは主人公のコンプレックスを表していたりとにかく意味不明に見えるシーンにきっちり意味が込められています。

 

ただこれらはプレイヤーに読解力が無ければ気付けないような要素なので私みたいな人間はクリアした段階で真っ先に「電波ゲーだな」という感想が出てきてしまいます。

逆に読解力の高い人、深読みする人、考察が得意な人は電波ゲーではなく「考察ゲーだな」という印象を受けると思います。(たぶん)

何度も言いますが人によって解釈や感じ方が全く変わってくるのはこういった内容だからですね。

総評

総評すると、狂気の考察鬱ゲーですね。

 

初見だとわかりにくい抽象的な表現がほとんどで絵柄や鬱々とした雰囲気、救いが0に等しい内容は非常に人を選びます。

ただし、設定の作り込みや狂気の大半を文章で表現する製作者様にはその凄さに脱帽です。

後半は印象に残るシーンの連続でマリオをジャンキー扱いする場面なんかも衝撃的でした。

修正するタイミングはあったはずなのにそのまんま移植するところに愛を感じます。

 

それと意外だったのはこれだけ鬱々とした内容でグロテスクな描写が多いのに反射的にビビるような驚かすようなシーンは最後の先生!のシーンだけなんですよね。

 

ただ逆にいうとここだけはめっちゃビビりました。

エンディングの曲が流れている中急に曲が止まり全裸の女の子が映し出されて終わりですからね。

その画像を載せることはできないので今回の記事はそれっぽい再現画像で終わりにしたいと思います。

 

先生!

 

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